仕事と家庭との両立は大変だったようだけど、なんとか子供も無事に育ってくれた。
宇実お姉ちゃんは国立六大学の一つに合格、そして女の子だけど、理学部に進んだ。
そして大学院まで進み、思う存分我が道を歩むことができた。
そして二番目のお姉ちゃんはというと、短大に進み、卒業後はままと同じ経理のお仕事をしたいからって、東京の会計専門学校に進んだ。
だけど・・・その年の５月１６日に、夢を果たせぬままこの世を去ってしまった。
やしのみ家では一番身体が丈夫だった二番目のお姉ちゃん・・・
風邪ひとつ引いたこともなかったのにね。
なんで？なんで？それなのになんで？って、今でも信じられないんだよね。みんな。
突然の小脳出血。怖いことだ。
かわいそうなお姉ちゃん。
でもね、いろいろ考えれば考えるだけ悲しさが増すだけだからね。
パパやままは二番目のお姉ちゃんのことがあってからは、テレビ番組の医者もの、病院ものドラマは観ていない。
思い出してしまうから・・・
思い出すのは楽しいことだけでいいよ。
みんなで旅行したこととかね。
キャンプ、楽しかったね。
大洗の漁港まで年末に早起きして一緒に行ったよね・・・
たくさんたくさん思い出はやしのみ家の家族の胸には刻まれていて、これからも決して忘れることはない。
Ｍちゃん、ありがとう。
２０年の間、ありがとう。
そして、これからもずーっとずーっときっときっとありがとうを言いたいし言うだろう。
ちょっとしんみりしてしまった。
今夜は御仏壇が置かれているお座敷でお夕飯をいただいた。
僕も今日は特別にお座敷に入ってもいいことになった。
パパがね「ハッピーはお利口さんだから、オイタはしないしお座敷には入ってもいいよ～♪」って言ってくれた。
うん？普段もいいってこと？
でもねえー、普段はやっぱり遠慮するよ。
だってねえー御仏壇があるしね、やっぱり特別なお部屋なんだもの、パパやままのお許しが出たら入ることにするよ。
夜、ちょうどお夕飯を済ませた頃に宇実お姉ちゃんからお電話があった。
やっぱりねえー 今日は二番目のお姉ちゃんの命日だからね、そのことでお電話があったんだね。
宇実お姉ちゃんは、ままがずーっと働いていたから、三つ違いの妹である二番目のお姉ちゃんの面倒をよく見ていた。
いわばちびままの役目を果たしていたわけだ。
幼稚園の送り迎え、そしてままが会社から帰ってくるまで、責任があった。
眼を離せないからね。
毎日毎日、大変な役割だったね。
ままが働いていたから、子供である宇実お姉ちゃんや二番目のお姉ちゃんは二人でいつも協力し合って、というより、姉である
宇実お姉ちゃんの方が大変だったとは思うけれど・・・寂しい思いは二人とも互いに感じていたんだろうね。
ままは働くのが好きだから、結婚以来ずーっと働きづくめだ。
でもね、正確にいうと、子供達が三歳になるまではお仕事もお休みして、お家にいたんだ。
「三つ子の魂百まで」という諺があるでしょう。
やっぱり三歳になるまでは自分の手で育てたかったらしい。
平成20年5月16日の金曜日。
今日は二番目のお姉ちゃんの祥月命日だ。
だから、ままは会社をお休みした。
毎年、この日だけは何が何でもお休みするようにしている。
だって、いつもいつも働いているままはこの日だけは二番目のお姉ちゃんとお家に一緒にいたいんだよね。
小さい頃からずーっとずーっと働いているままだもの、この日くらいは会社で有休をいただいて、お休みだ。
パパとままは朝早くに巣鴨にお墓参りだった。
事故渋滞が少しあったけれど、ワリにスムーズに着いたそうで、良かったね。
大体、週初めの天気予報だとお天気は崩れそうなことを言っていたから、パパ達は心配していた。
でもね、予報は外れ、今日はとっても良いお天気になって、本当に良かった。
お墓参りするのに雨が降ったんじゃあ、どうしようもないものね。
かといって、命日にはお墓参りはしたいしね。
良かった良かった。
二番目のお姉ちゃんが天国に行ってからもう、１４年目に入る。
昨年が１３回忌だったからね。
年月が経てば天国のお姉ちゃんのこともそう悲しんではいられなくなるって・・・記憶が薄まるって・・・そして辛くなくなるって・・・
そんなことが巷では言われているけれど、そんなことはない・・・
どんなに月日が経とうとも、二番目のお姉ちゃんのことは事あるごとに思い出してしまう・・・
ああ、こんな時こうだった、あんな時ああだったって、パパやままは思い出すらしい。
思い出すのは仕方ないよね。
だからって、いつもでも落ち込んでいるわけでもないから、いいんだよね。
思い出すことって、僕はいいことだと思うけどな。
忘れたくはないよね。
二番目のお姉ちゃんが大好きなびわにさくらんぼうにメロンにバナナ等々の果物をたくさん買って、お供えした。
南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経・・・
２０年という短い「時」だったけれど、二番目のお姉ちゃんはやしのみ家を幸せにしてくれたんだよね。
楽しい思い出をたくさん残してくれたんだよね。
お姉ちゃんありがとう～♪
僕はね、パパやままや宇実お姉ちゃんから二番目のお姉ちゃんのことはたくさんお話を聞いているから、ようく分かるんだ。
南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経・・・
そして、いよいよ僕のお気に入りになった、この写真だよ。
大きなトランクの中には分厚い本が立てかけてあった。
そして、僕はその中に入るように言われた。
あーっ、ままが大好きなご本があるよー
でも、これってちょっと小さくない？厚みもあるし、。。僕は入れるかなあ？
ひょいっ！大丈夫だった、良かったあ～♪
次に、トランクに手をかけるように言われた。
そーっとかけてみた。
なるほどねえー・・・うん？そばにきれいなお花も置かれたよ。
「あらっ！ハッピちゃん、可愛い～♪ ハッピーポッターだあー！♪」
見ていた皆が口を揃えて言っているのが僕の耳に入ってきた。
うん？僕って今注目されてるの？
