実は今まで特に言うこともないと思っていたけれど、ままのおばあちゃんは３年前から、老人ホームに
入っている。
老人ホームといっても、元気な人だけが入ることができる、特別な老人ホームだ。
今から年を重ねるだけだから、今元気な内にそういう施設に入っていた方が良い。
老老介護の状態になると大変だからね。
そう決断したおばあちゃんは思い切って入所したのだった。
場所は海が好きなおばあちゃんにぴったり！
鎌倉の朝陽が拝める海のすぐそばの施設だ。
趣味の会もたくさんあり、今は大正琴や手芸のサークルに入っている。
明るくて社交的なおばあちゃんはすぐにたくさんのお友達もできて、毎日明るく楽しく暮らしている。
出入りは自由で、いつでも外泊もできるから、折を見て子供達の家を順ぐり廻って楽しんでいる。
今が一番幸せだわ～♪って、いつも口にする。
束縛されず、自由を謳歌しているせいなのか、いくら親子といえども、いや親子だからこそぶつかることも
あるわけで、おばあちゃんが今が幸せなのだと思えばそれが一番いいに決まっている。
真実であればの話だけどね。
子供を心配させないように、ひょっとして気持ちと反対のことを言っているかもしれいなけれど、表面的には
そんなことはおくびにも出さない。
疑えばキリがないからね。
おばあちゃんの言うことを信用するしかないよね。
パパのおばあちゃんも、実は今年から介護施設に入っている。
パパのおばあちゃんはままのおばあちゃんより５歳も年を取っているからね。
少し認知症の気があって、そういう意味では前頁に書いたように、長生きはしているけれど、病気を持っているから、
正確には元気と一言では言えない部分がある。
意識がはっきりしている時とそうでない時があるからね。
でもね、話しているうちにだんだんわかってくるみたいなんだ。
それがね、１４日の金曜日にこんなことがあった。
福岡の宇実お姉ちゃんから、ままに久しぶりにメールが入ったんだ。
最後に「実はおばあちゃん達にこの週末に手紙を書く予定。福岡のお菓子も買ったんだよ～ よろぶかな♪」
って書かれていた。
ままは慌ててしまった。
実はパパのおばあちゃんは介護をもっと良くしてくれる施設に変わったばかりだったんだ。
今まで教えていた住所にはもういない！
１週間ほど前に変わったばかりだから、パパもままもまだお姉ちゃんには教えていなかった。
やっぱり、寄り道をしていたんだね。
明日は敬老の日だから、おばあちゃんに何かプレゼントをと、デパートに寄ってきたらしい。
プリーツ式のニットのスーツを目ざといパパが見つけたようだ。
僕はいつも不思議でしょうがないんだけど、パパは自分のお洋服を選ぶのは苦手なのに、女物のお洋服を見つけるのが
とても上手だ。
どうしてなんだろうね。
上下共にプリーツになっているから、脱ぎ着が簡単だものね、これだったらきっと喜ぶに違いないわ！
ままも「いいのを見つけたよ、あそこにあるあのお洋服はどお？」とパパに示されたそのお洋服を見て、一目で決定したようだ。
色も鶯色で秋らしい。
おばあちゃんはグリーン系とパープル系が大好きだからね。
良かったねえ～♪いいのが見つかって～♪
年を取ってもお洒落は忘れてはいけないよね。
幸いおばあちゃんはとてもお洒落さんだからな。
やはり、洋裁教室を長いことやっていたから、そういう類の専門誌もよく見ていたし、若い人を教えていたから、
影響されたことは確かだね。
平成19年9月16日の日曜日。
今日は二番目のお姉ちゃんの命日だから、パパやままは巣鴨へお墓参りだった。
今日はやはり連休のせいか、道路が混んでいるのかなあ、帰りが遅かった。
いつまは１１時くらいまでには帰宅するのに今日はやけに遅いなあ。
あまりにも遅いと事故でも起こしたのじゃないかと心配だよ。
どこか、寄り道でもしているのだろうか。
というわけで、そのおいしそうなお菓子は介護施設の職員さん達に食べていただくことにしたのだった。
お姉ちゃんの優しい心がおばあちゃんに伝わるといいね。
意識がしっかりしている時だといいね。
パパのおばあちゃんはままのおばあちゃんに比べると、ちょっと今辛い立場にある。
だけど、ままのおばあちゃんもいつなんどきどうなるかなんてわからない。
理想は元気で長生きなんだけれど、そうもうまくゆかないのが世の中の常なんだよね。
その時はその時で、子供や孫達はしっかり見守っていかなければいけないよね。
何があろうとも、今パパやままが生きているのはおばあちゃん達のお蔭なんだものね。
残り少ない人生なんだもの。
親孝行をたくさんしておかなければきっと後悔するに違いないものね。
みんなみんな年を取って行く。
それは誰しも同じ時を刻んでいるから。
でも、その時をどのように使うかは各人だよね。
僕は今６歳と３か月だ。
何年この先神様が生かしてくださるかは分からないけれど、今この時を大事にしなければって、そう思うよ。
そして、いよいよ僕のお気に入りになった、この写真だよ。
大きなトランクの中には分厚い本が立てかけてあった。
そして、僕はその中に入るように言われた。
あーっ、ままが大好きなご本があるよー
でも、これってちょっと小さくない？厚みもあるし、。。僕は入れるかなあ？
ひょいっ！大丈夫だった、良かったあ～♪
次に、トランクに手をかけるように言われた。
そーっとかけてみた。
なるほどねえー・・・うん？そばにきれいなお花も置かれたよ。
「あらっ！ハッピちゃん、可愛い～♪ ハッピーポッターだあー！♪」
見ていた皆が口を揃えて言っているのが僕の耳に入ってきた。
うん？僕って今注目されてるの？
すぐに新しい住所を教えようとメールしたけど、お姉ちゃんから返信が今朝もなかった。
変だなと思ったままは巣鴨へ向かう途中、今度は携帯にメールした。
お姉ちゃんはぷりぷり！
「毎日パソコンを開けないし知らなかったわよー ギャアーッもう送っちゃったわよー」
とりあえず、宅急便の会社へ連絡し、やしのみ家に転送する手はずが整い、事なきを得たけれど、お姉ちゃんは
「どうしてもっと早くに教えてくれなかったの？」って、ぷりぷりが治まらず、ままは「ごめんごめん、パパが
とっくに教えていると思ったのよー でも、こないだ移ったばかりだから・・・」と大慌て。
パパはパパで教えてるだろうと思っていたし、こういうのって、やっぱりちゃんとした方がいいよね。
要するに確認ってやつさ。
誰かがやるだろうではなくて、常に大事なことは確認が必要だってことだよね。
お姉ちゃんはめったに怒ることはないけれど、こういう類に関しては瞬間湯沸かし器になるようだ。
多分驚きのショックが強くて、火が付いたとは思うけどね。
人間って怒る基準が各人違うんだね。
とにかく、悪いのはパパとままだ。
ごめんなさいは確かなことだね。
なぜやしのみ家に転送してもらったかというと、１９日にパパのおばあちゃんにパパが会いにゆくことになって
いたからだよ。
お手紙は、眼が悪いおばあちゃんはきっと読みにくいだろうし、もし調子が悪いと誰からの手紙なのか分からない
場合もあるからね。
お菓子も聞いたらおもち状の黒蜜あんかけだということだし、おばあちゃんはのどをつめる恐れがあるからね、
そういう詳しい身体の状態を知らなかったお姉ちゃんだったけれど、これにしたって、もっとパパやままが
前もって知らせておけばよい話だよね。
