枯れ葉だっていいのさ

駐車場と玄関に置かれている鉢植えのお花が「もうわたしの出番は終わりじゃないの？」と、最近訴えている。
朝晩、ホースからのシャワーを浴びてはいるけれど、今年のこの異常な暑さにはもう耐えきれないらしい。
そうだね、あまり、無理しなくてもいいよ。
枯れ葉となって落ち着いた方がいいよ。
僕はそっと囁いた。

何かをやる時に、よく100％出し切ってはいけないってある人が言っていた。
えーっ、なんでなんだろう？

頑張るっていうことは、１００％はおろか、100％以上出すことじゃないの？

いやいや、それじゃあいけないんだ。
この人は、あるいはこれは、今の状態でこうなのだから、余裕があるってことだ。
だから、この状態が100％になるとすごいものがあるし、いやそれ以上になると、とてつもなく素晴らしいものが
あるに違いないという風に思わせることが大切なのだそうだ。
ああ、これで100％なのか、じゃあ、もうこれ以上は無理だってことだねと思わせてはいけないそうだ。

でもね、それってなんだかずるい感じがするよね。
要するに本当は100％出し切っているのに、そうでない80％くらいしか出していないんだよっていう、フリをするわけでしょう？

平成19年9月17日の月曜日。

昨日の夜はパパとままはいつもの行きつけの飲み屋さんに出かけてしまって、僕はひとりぽっちだった。
ままが転んで頭を打ってから今日でちょうど1週間だ。
一応内出血しているし、心配だからとその間一滴もお酒を飲まず、いわゆる禁酒状態だったままは、今日は
解禁だと嬉々として出かけた。
僕はそんな予感がしたんだよなあ。
今夜あたりが危ないなあってね。
まあ、仕方ないかな。
毎晩パパとままは二人でお酒を飲んでいるからね。
それが、１週間も飲まなかったわけで、これはままにとっては驚異的なことだ。
多分結婚してから初めての出来事だと思うよ。
こんなことでもなければ、肝臓はお休みする暇がなかったかもしれない。
だから、不幸中の幸いとも言えるのではないかな。

僕はそういうのは嫌いだな。
そういうのって正直じゃないからね。
なんで隠す必要があるの？
出世のためなの？
僕はそのお話を聞いた時に、ぷんぷんしてしまった。
前頁で、宇実お姉ちゃんが怒った場面があったでしょう？
そうさ、僕が怒る時っていうのは、こういう場合だ。
嘘を付くってことが大嫌いんだよね。
正直とか誠実とかいう言葉に反する行為に関しては、僕の場合は瞬間湯沸かし器に変身だ。

だからね、いいんだよ。
疲れたなら無理なんてしないでさ。
120％なんて出す必要もないし、80％だっていうフリをすることもないよ。
枯れ葉になろうと、風情のある枯れ葉になればいいのさ。
そうだよ、「枯れ葉よ～♪」って親しみ歌われ続けているあの枯れ葉にね。

枯れ葉が急に多くなったような気がする。
まだまだ残暑が厳しいけれど、確実に秋は近付いているのかもしれない。

でもね、変なんだよね。
そうは思いながらも、秋と言えばコスモスだけれど、今年はコスモスの咲くのが遅いようだ。
お散歩道に毎年見られるコスモスはまだ蕾が多い。
あまりにも暑いから、まだ出番じゃないわねって、袖で待っているのだろうか。
なんでもそうだけど、出番っていうのがあるんだよね。
早くても遅くてもダメだ。

小さい秋を見つけようと思うけど、目に付くのは枯れ葉ばかりだ。
でも、この枯れ葉だって、重要な脇役だよね。
縁の下の力持ちっていう言葉があるけれど、いわば、枯れ葉は秋の風情には欠かせない。
シャンソンに「枯れ葉」という歌があるけれど、あれは「枯れ葉よ～♪」と曲に乗ってあたかも
枯れ葉が舞い降りてくるかの如く、「サマ」になっている。
ちょっと見た目には汚く感じる枯れ葉も、少しばかり視点を変えて見てみると、そこはかとした
ものを感じてしまう。

ままとしてはずいぶんストレスが溜まっていたと思うしね。
僕はその間ふてくされて寝ていた。
でもね、寝ていてもパパやままが帰って来た時っていうのは、いち早く分かる。
だから、すぐに「おかえりなさ～いワン！」って言えるように、玄関までかけてゆき、玄関マットの上で待っているんだ。
そういう僕を知っているパパ達はリビングと玄関フロアーの間のドアーを開けっ放しにしていてくれるんだ。
時々開けるのを忘れて締め切りになったりすると、なんだかすごく悲しくなって、寝るどころではない。
その境のドアーのそばでじっと待ち続けるんだ。
ままはそんな僕をよく知っているから、滅多に忘れることはないけれどね。

パパ達は僕の吠え方でどうやら分かるようだよ。
締め出しされた時の僕の鳴き声は訴えるような鳴き声らしいからね。
えっ！今夜は大丈夫だったよ。
ちゃんとドアーを開けてくれていたからね。
久しぶりにお酒を飲んで帰って来たままはパパと冗談を言いながら、とてもご機嫌だった。
お酒って飲みすぎなければかえって心身共に良い影響を与えるのかもしれないね。
なんでも無理に抑えつけるのって、逆にストレスが溜まって病気になったりするのかもしれない。
ままの様子を見ていて僕はそう思った。

そして、いよいよ僕のお気に入りになった、この写真だよ。
大きなトランクの中には分厚い本が立てかけてあった。
そして、僕はその中に入るように言われた。
あーっ、ままが大好きなご本があるよー
でも、これってちょっと小さくない？厚みもあるし、。。僕は入れるかなあ？
ひょいっ！大丈夫だった、良かったあ～♪
次に、トランクに手をかけるように言われた。
そーっとかけてみた。
なるほどねえー・・・うん？そばにきれいなお花も置かれたよ。
「あらっ！ハッピちゃん、可愛い～♪　ハッピーポッターだあー！♪」
見ていた皆が口を揃えて言っているのが僕の耳に入ってきた。
うん？僕って今注目されてるの？