日暮れて途遠し
その4 「皆さん、やっと私も売れましたあ～♪」
ある日、女子社員が嬉しそうに皆さんに報告だ。
うーん、この頃やけにきれいになったと思ったら、やっぱりそういうことだったのねえ～♪
痩せてスマートになって、表情も生き生きとして～～♪
単調なようでいて、そうでない日々。
年を重ねるということはこういうことなのね・・・と思う。
あれもやりたこれもやりたいと思う日々・・・
しかし、確実にまるで砂時計のようにさらさらと時間は流れてゆく。
ふと気が付くと、自分は今までいったい何をやってきたのだろうと思う。
日はすでに暮れているのに、目的地まではまだまだ遠い。
既に年老いたのに、やるべき計画は山ほどあり、しかし、到底その目的は果たせそうにもない。
あせりだけは一人前だ。
でもね、決してあきらめてはいけないのよね。
一歩一歩、変哲のない毎日であるようでも、きっと何か、何か、何か良いことが
待ち受けているような気がする。
2ケ月おきのカレンダーもついに1枚になってしまった。
その1 子会社の大阪支店から、年末年始のお休みはどうなっていますかとの
問い合わせがあった。
その2 デパートからは早々にお歳暮の申込書が案内書と共に送られてきた。
2007年も残す2ケ月なのねえーとただただ出るのは溜息のみだ。
忙しさに追われ、ゆとりがない証拠だ。
自分自身は嗤えるけれどいつまでも少女の気分なのだが、鏡を見れば、そこには
くたびれたしわくちゃの老いた己が真正面から「あなたも年を取ったわねえ」と
話しかけてくる。
どんよりとした眼、張りのない皮膚、それでも顔を洗い疲れ眼の赤目に目薬を射し、
お化粧をしている内に、なんとか見られる顔に変身だ。
「さあー、今日もお仕事頑張らなくっちゃね！」と言い聞かせ、さあー次の行動だ。
出勤するまでの慌ただしい時間は、瞬く間に過ぎてゆく。
いつもの時間に出て、いつもの時間の電車に乗って、いつものように電車では本を読み、
そしていつの間にか眠り・・・そして、いつもの時間に会社へ到着と、こうくればいいのだが、
ともすると眠りこけて、気が付けば二駅も三駅も乗り越している時もある。
大抵は乗り合わせのメンバーは同じだから、あらっ、あの人乗り越したのねーとバレバレだ。
恥ずかしい思いであたふたと降車し、慌てて反対ホームへと駈け込む。
年を取ると共にその回数も増えているような気がする。
その1 「ただいまあー」と営業から帰って来た人が、机に座るなり「あーあー！」と
大きな溜息をついた。
それを聞いた周りの人は大笑いだ。
しかし、本人はその大笑いの反応にそれこそなんの反応もなく、笑ってごまかすのでもなく、
すぐに取引先に電話をかけていた。
余裕などまるでなしだ。
疲れているのね・・・と思う。
その2 せっかく休暇を取って、夫婦旅行をしているやはり営業の人から「何かありますか？」
と電話がかかってきた。
何も楽しんでいる最中なのに、仕事は忘れなきゃねって・・・思う。
その3 「さあー、今日は花金だわ～早帰りしましょう～」と思っていた矢先に、「ねえねえ、
共有フォルダが開けなくなっちゃた、見てくれるかなあ」と言われ残業になってしまった。
無視して帰るわけにもゆかず、「ああーああー疲れたわー」と・・・思う。